背戸峨廊
2008.9.13
そろそろ秋の声が聞こえてきそうな9月の中旬。ふと、いわき夏井川渓谷にある「背戸峨廊」に行ってみようと思い立った。「背戸峨廊」とは、いわき出身の詩人草野心平が名付けた、夏井川渓谷へと注ぐ江田川が刻む峡谷の名前である。遊歩道が整備されていて沢登りの技術なくして存分に深山幽谷の趣を味わうことができる。
ただ、それと同等のスリルも味わうことになるけれども・・・
10時過ぎに江田駅付近の駐車場に到着。付近にはトイレも整備されていて、新緑・紅葉の頃には大変な人出でにぎわうことが想像できる。さっそく渓谷に入ってみた。
入口からしばらくは、サンダル履きでブラリと見学する人々もチラホラいるが、奥に進むにつれて少しずつ足場が悪くなり、紅葉のシーズンを外れているためかほとんど人がいなくなった。

渓谷内は木々が思い思いに枝を伸ばし天井から差し込む光はすべて緑色である。
途中いくつもの滝が現れる。
飛んでくる水しぶきからさらに細かい霧が発生してあたりを満たしている。
水の音しか聞こえない。
不安定な岩場を歩いて行くと、突然目の前に木のオブジェが!
森の中の光に浮かび上がるようにあった。
倒木を処理するために切り刻んだ、ただの残骸なのだが、皮の質感、枝の不自然さが異様な存在感を示していた。
自然物なのだけど自然ではない、人間の手が加えられているが人間のものになりきっていない、何とも不思議な感じがした。
今はもうどこかに流れて行ってしまっているだろうが、、
渓谷は変化に富んでいて、例えば下のような静かな場所があるかと思えば、、
このように大きな滝の脇の梯子を、水しぶきを浴びながらよじ登っていくような、荒々しさも持ち、変化に富んでいる。
基本的には下の写真のような遊歩道を歩いて行けるのだが、、、
突然、足をほとんど川にいれて、鎖を握って歩いて行くような個所もありスリルは満点。
そんな川のさまざまな表情を楽しみながら歩いて(よじ登って)行くと、道は突然渓谷をから外れて山を上り、あとはひたすらもとの駐車場に向かって戻り始める。
少しずつ上ってきたのでわからなかったが、下ってみると意外と山の上のほうまで登ってきたようである。
駐車場に戻ると、急に現実に戻されたようでしばらくコスモスを見てボーっとした。
県道では時折すごいスピードで車が走りすぎてゆく。
おそらく、すぐわきの山の中にこんな世界が広がっていようとは夢にも思わないだろう。

入口から遊歩道最後の滝まで4キロほど。帰りの山道を入れて8キロ弱の行程であった。
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