雨の四時川林道ラン
2009.5.30
つい最近職場の先輩に、ここいわきの四時川渓谷の奥にカジカガエルがいるという話を聞いた。とても鳴き声の美しいカエルだそうで、ぼくは「ケロケロとなくんですか?」と聞くと、「ケロケロなんて失礼な、フィーフィーとなくんだよ」と教えてくれた。ぼくはカジカガエルという名前を初めて聞いたし、そんな高貴な(!)鳴き声のカエルがいるのならお目にかからずにはいられないと四時川渓谷行きを決めた。
ネットで調べてみると、「河鹿蛙」と書き全国の渓流に生息し、鳴き声の美しさ古くから日本人に愛されてきたそうである。そしてどうやら四時川渓谷だけでなくいわき近辺の他の渓流にも生息しているようだ。
この日は天気予報では雨で、今日は読の日かな、と朝から本も読まずにのんびりしていたのだが昼を過ぎても一向に雨が降る気配がない。
そうなるとだんだん身体がウズウズしてきて、気が付くと自転車に跨ってR289を登り始めていた。
四時ダム手前でパラパラと雨が降ってきたが、既に汗ビショビショになっていたので無視。
雨が降っていた方がカエルに会えそうな気がするしネ(なんとなく)。
R289を田人方面に登るコースはロードの練習で最もよく使うコースのひとつだけれども、ランドナーでのんびり走ると普段見えなかったものが見えてくる。
四時ダムのトンネル手前で旧道に入りそのまま現道にぶつかるまで走っていると途中で清水が湧き出していた。こんなものがあったんだなとボトルに入れる。
次の田人おふくろの宿手前のトンネルはトンネル内も上りこう配でロードでもなかなか抜けられず(1キロくらいある)あまり好きではないんだけど、ランドナーではもっと時間がかかってうんざり。
しかし、トンネルを抜けると路面はぬれているものの雨は上がっていた。
根室トンネルを抜けてダラダラとした斜面を上り、田人峠(と勝手に命名している)手前の未改良区間の始まりに着いた。この未改良区間もいろいろな意味でなかなかすさまじく、まさに「酷道」の名に恥じない勾配&幅員である。
ロードで逆方向から下ってくるとテクニカルで面白いのだが、すでにトンネル工事も始まっていて今年中には新道に切り替わるようだ。なんか寂しくなるなぁ。。
そんなステキ区間を登り切り峠部に着いた。標高は700メートルほど。峠手前から2車線の普通の国道スタイルになっている。
雨は降っていないが時折ガスに巻かれる。四時川渓谷へはここから少し下ったところから林道を入る。土砂降りの中の林道下りはさすがに躊躇するが、峠の頂上でこんな感じだし大丈夫だろうと決行することに。
その時木材を満載した大型トラックが未改良区間目がけてぶっ飛ばしていった。
対向車に遭わないことを祈る!
四時川林道に入り渓谷目がけて下っていく。
すると急に雨が本格的に降り出した。
ここまできたらどうしようもない。
雨の林道下りを楽しむことにした。
マイナスイオン大盤振る舞いの森。
林道内は霧がたち込めていて幻想的だ。
しばらく下って川と合流。
ここからダートとなる。
その後はずっと四時川を右手に見ながら緩やかに下ってゆく。
ここ四時川には幾度となくDT50や自転車で訪れているが、渓谷といってもとても大らかな感じでとても好きだ。

さて、今回の目的(今の今まで忘れていた!!)のカジカガエルがいないか耳を澄ます。しかし、辺りは川の音、雨が木々の葉にパラパラと当たる音、そして時折鳥の鳴き声が聞こえるくらいでそれらしい鳴き声は聞こえてこなかった。
カエルの鳴き声に注意しつつ下っていく。今はちょうど新緑の時期で、雨空の柔らかい光を透過した木々の葉がステンドグラスのようでとても奇麗だ。
昨年行った奥入瀬渓流も素晴らしかったが、身近にもこのような自然があることに感動し感謝する。
生活道路にもなっているようで、路面は概ねフラット。
雨降りとは言え、森の中は意外に平気で緑のトンネルを軽快に下ってゆく。

この四時川林道の脇には随所で左のような層状の結晶片岩がせりだしている。この手の岩はいわきの近辺の他の渓谷などでも見かけるもので、いわき一帯が似たような地質でできているのかもしれない。
荒々しく削られた切り通し。

岩は脆いらしく、小規模の落石跡がたくさんあった。
学生の頃は雨の日もレースはあるんだと言って、雨の日も練習に出かけていたが、普通雨の日は自転車に乗らないし、ツーリングをするなら晴れた方がいいに決まっている。
しかし、雨に濡れた青葉の美しさなど雨の中出掛けて初めて知りうることも多々あるわけで、今まで自分がベストコンディションであると思っていたことを疑ってみること、そして実際に様々な条件の下で物事を観察してみることが重要なんじゃないかとふと思った。
いずれにしても、今回雨の中でも走り出してよかったのだ。
そうこうしている間に見覚えのある標識が林立している林道入口にたどり着いた。

気が付くと雨はもう止んでいた。
しばらく走ると舗装路になる。
ダートから舗装路に入る時にはいつも、何か急に現実世界に引き戻されたようなフワフワした感じを受ける。ちょうど、映画館で映画を観終わって外に出た瞬間のような。
四時川を渡り、田人方面へ渓谷沿いを下る。
ここでコーヒーブレーク。
四時ダムにて。
今回は結局カジカガエルには会えなかったが、雨の渓谷下りも楽しかった。

8月位まで繁殖期だそうなので、また機会を見つけて会いに行こうと思う。
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